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話を「聴く」ということ

鍼灸師のお仕事とは別に、国が行っている機関での電話相談のお仕事を今年に入ってから始めました。

 

鍼を打つことが仕事だけれども、それだけやっていればいいわけではなく、傾聴の大切さを日々実感していて、いつか

どこかで実践的に学びたいと思っていたのです。

 

本当に色んな方からのお電話があります。全国からの電話を受け付けているので、つながる確率はわずか3%とのこと。

あまりにもつながらないので、何百回とかけてくださる方もいるようです。申し訳ない・・・。

 

精神疾患を持った方、職場での人間関係、介護、恋愛・・・。様々な悩みでお電話してくださいますが、みなさんにひとつ共通しているのは、「話を聴いてほしい」ということだと思います。

(ここではあえて「聞く」ではなく「聴く」と表現したいと思います。「身を入れてきく」という限定的な意味を持つ「聴く」が私は好きです。)

 

電話相談のマニュアルというものが一応あるのですが、マニュアル通りにいかないことがほとんどなのだなあと気付かされます。

 

話を聴き相手に寄り添うことが大切なのですが、寄り添いすぎてもいけない。流されすぎてもいけない。非常に難しいです。

 

その中で、私が学んだことを少しまとめてみたいと思います。

 

・指導的、断定的な対応はしない。

 指導が目的ではなくあくまでも受容し寄り添うスタンスで。

・相談者の「生活像」をつかむ。

 相談者がどんな状況、どんな想いで電話口にいるのか、想像力を働かせる。

・言葉の感覚をつかみ、言葉の吟味をする。

 同じ言葉を使っていても同じ内容や意味だとは限らない。相談者が使う言葉を用いながら、共通認識を一緒につくっていく。

・自分の価値観をできる限り排して聴く。

 五感でとらえる。自分の考え方のクセを知ることが大切。

・漫然と聴かない。 

 これが実は一番難しいかもしれません。特に、頻回に電話される方や同じ話を繰り返される方、話が止まらない方に対しては、どうしても聴く側もぼんやりしてしまいます。それが悪いことではなく、聴いてくれただけで満足という方もいらっしゃいますが、それでこちらが満足してしまうのは違うのではないかと思ったり。私の課題です。

 

 

まだまだこれからなので、また気づいたことがあればつぶやいてみたいと思います。

 

東日本大震災があった年から始められたというこの電話相談。その頃からずっといらっしゃる相談員の方も何人かいらっしゃいます。

 

社会福祉士さん、精神保健福祉士さん、臨床心理士さん、弁護士さん、行政書士さん、元ホームレスの方・・・。

それぞれの立場、境遇から発せられる言葉、聴き方、考え方。心が揺さぶられる瞬間も

数多くあります。

 

これからもよろしくお願いいたします。